フォレスティング・ニュース No.1
《ネムノキの花》フォレスティング(関宮)関係者の皆さん こんにちは! 神戸市垂水区の福島です。 酷暑が続いていますが、お元気でお過ごしのことと思います。 つれづれに、山の便りを綴ってみることにしました。不定期ですが、できる限り続けていこうと思っていますので、よろしくお願いいたします。 お気付きの点がございましたら、いろいろお教えください。 6月初に来てみると、ブナの樹肌のようにツルッとした滑らかな落葉樹に新緑の葉がついて、これがトチノキであることがわかり、途端に嬉しくなりました。 その理由の一つ目は、緑光のエネルギーが燦燦と輝いて素晴らしいこと! 心身がジワッと癒されてくるのがわかります。二つ目は、ここに“ブナ”を植えたら、ヒョットして育つかもしれないと思えたからです! 標高がもうあと100〜200メートルあれば、すぐそばの氷ノ山や、六甲山と同じように、ブナが居てくれたかもしれません。 ブナは“橅”と書きます。木へんに用無しの無しです。戦後の拡大造林時代には、ブナはじめ落葉広葉樹を伐ってスギ・ヒノキを植えました。当時はこれが正しいとされていたのです。 ですが、ブナはじめ落葉広葉樹は、土壌・生態系を豊かにして“緑のダム”をつくってくれます。つまり、ブナが生えているところ(土壌)は、降水の保持力が優れているのです。洪水や渇水を防いでくれるのです。
昭和30年代の“燃料革命”(それまでの薪炭を燃料としてきた時代から、石油がとって替わりました)以降、高度経済成長とともに山は手入れする人が少なくなりました。都市への人口流出と山村の過疎化・高齢化がもとになっています。また、同じ頃、外国から安い外材がどんどん輸入されるようになりました。日本の林業が振るわなくなった理由です。
今、林業作業にたずさわっておられる方たちには、常日頃、敬服・感謝いたしております。皆様がたがいらっしゃるから、私たちは安心して山で遊べますし生活もできるのです。くれぐれも健康・安全に留意なさってご活躍ください。 トチノキ、ミズナラ、カツラ、ヤマハンノキ、イタヤカエデなどなどは、ブナ群落(その森林の植生のボス[極相]がブナということ)の仲間なのです。 アカマツ・コナラ群落は、どちらかといえば温かい(暖温帯)森林の主(私の住んでいる六甲山系の西端、塩屋はウバメガシ群落、アカマツ群落、コナラ群落が主体です)で、ブナは寒い(冷温帯)森林の主です。 温かい森林の中に、ブナの友達であるトチノキが住んでいても一向にかまわないじゃないの。 よくあることだろうし、とにかくこの地は関宮町で、兵庫県で一番高い氷ノ山(1510メートル)があり、冬は豪雪地帯なのですから。 『ここ大野峠にブナを植えたら、ひょっとして、育ってくれるかもしれない … 』 大変馬鹿げたことかも知れませんが、こんな夢を持つことはロマンがあって楽しいじゃないですか。 ◇ 私たちは、森林から、かけがえのない贈物を受けています ◇ 昔の縄文の人たちは、現代人とは違って、人間活動の場が自然(森林や海辺)そのものでしたから、ブナをはじめいろんな樹木を大切にしてきたはずです。豊かで美しい自然を畏怖しつつ、自然の懐に抱かれて暮らしてきたのです。山菜・茸・木の実・鳥や獣・木材など“山の幸”(海の幸・川の幸も)である自然の恵みをいただくかわりに、森や山を大切に守り、子々孫々に引き継いできました。 森林は、私たちにとって、大きな財産です。 そして、現代人の私たちも、このかけがえのない森林・自然・地球をミニマム・インパクトで、未来人の子々孫々へ、繋いでいかなければなりません。
よく聞く言葉ですが、『今の地球は、私たちの子々孫々からの預かりもの』とか、『「我々は、地球に住んでいる」ではなくて、「住まわせてもらっている」』と考えたほうが、より自然を大切にしょうとする気持になれるのではないでしょうか。 「地球に対して謙虚な気持を持ち続ける」。簡単なことのように見えるのですが、非常に難しい問題です。しかしながら、私たち人間は、地球環境を破壊してしまうと、生きていけません。人間は、地球における一種の寄生生物なのですから。食物連鎖の最頂点に位置する動物(時として猛獣?)なのに、“人類は別格とする”なんて主張する人達がいるようです。自然との共生が、自然との共存共栄の最適条件なのにね。 ☆ トピックス ☆ 島 シカと見届けたヨ! 6月29日 ここ大野峠でいつもの作業を始めようと腰を下して準備していたら、西南西方向の裏山からシカが1頭ガサゴソ駆け上がって来ました。♀のよく肥えたシカで、周囲をとくに警戒するようでもなく、ササなど下草を食べようとしていました。まだ私の存在に気が付かない。距離約25メートル。私は、ゆっくりと立ち上がりながら、シカに気付かせることにしました。「何でこんな所に人間がいるんだろう?!」と怪訝そうな表情で、暫らく(1分以上はあったと思う)見つめ合っていました。目が可愛いね。私が少し動いた途端、サッと身を翻して北方向へ逃げ出しました。甲高い声を何度も発しながら。「アーア、ビックリシタナ、モウ!」とでも言わんばかりの様子でした。幸運でした。 今回をいれて4回、シカに遭遇しています。最初のも印象的でした。北海道の糠平湖のあたりをドライブしていました。カーブを曲がった途端、カップルの大きなエゾジカが道路の真中を歩いていました。咄嗟にブレーキを踏んで、30メートル手前で事無きを得ましたが、当のシカたちはキョトンとしたふうで、別に驚いた様子はありませんでした。呼吸を整えながら、バックシートのカメラを取り、構え、ゆっくり・静かに・ソッとドアを開けたつもりでしたが、周囲の深閑とした空気をかきまぜるほどの音が出た途端、2頭揃って、ブッシュの中に逃げ込んでしまいました。大きな見事な角でした。写真は撮れませんでしたが、目にしっかり焼きついています。 落着いてから考えてみるに、ちょっと複雑な気持になりました。 今、全国的にシカが増え過ぎて食害が問題視されています。畑の野菜、山菜、シイタケ、ササ、スギ・ヒノキ、落葉樹など大被害に遭っている林家がかなりあるようです(「GR現代林業02年3月号」/全国林業改良普及協会発行定期雑誌)。 私んちのフォレスティング場でも、ツキノワグマの爪とぎ痕(3本の爪痕が特徴)とシカの角とぎ痕が、トチノキなどの落葉広葉樹の幹に数ヵ所つけられています。一番安価でかなり効果的な防止法は、縄を幹に何段にも巻きつけることらしいですね。爪や角が縄にからんで、クマやシカが仕事がしにくいらしいです。 シイタケ榾木をやっておられる方、気をつけましょう。シカだけでなく、サルやクマはシイタケを食べないのでしょうか? 周辺のササは、餌として少し残しておくのがよいみたいですね。 島 簡易トイレで安心 森林組合のほうで、簡易トイレを設置していただきました。ありがとうございます。家内が喜んでいました。あと、水が出るようにしていただければ完璧だそうです。私は、昔から山では、掘って埋めるコンポスト(堆肥)方式の愛好家です。お世話になった自然に返してあげるのです。痩せた地力も回復できるでしょう。なお、ティッシュは土壌が消化しないので、トイレットペーパーを使っています。 島 連絡資料ボックス設置 ログハウスの中に、連絡資料ボックスも設置していただけました。なかなかチャーミングなボックスです。ご苦労様でした。早速、私もこのニュースを入れさせていただきます。 島 キノコ2題 ログハウスのそばの土壌壁面から、コツブタケ(小粒茸、ニセショウロ科、腹菌類)が生えていました。土色で丸型です。ナイフでカットすると、内部は黒色でした。これはマツタケやイグチと同じ菌根菌なのでしょうね? キノコに詳しい方、教えてください。 もう一つキノコ。黒い帯状のカバアナタケ(樺孔茸、キコブタケ科、担子菌類)。図鑑を見ると、生木に生えるとのことで、木材腐朽菌ではないようです。 いずれのキノコも食不適です! 島 モリアオガエル 簡易トイレそばの水場(水たまり)の壁面に、モリアオガエルの卵(白い泡状の卵塊)を見つけたのが6月29日(泡の下方には、イモリが今か今かと待ち構えていました)。 次に7月13日に見たら、泡がなくなって、オタマがいっぱい泳いでいました。イモリも魚も狭いところで住んでいました。 イモリがお腹を満腹させてもなお、オタマジャクシの数が勝っているのですね。食物連鎖という自然の摂理です。食物連鎖の上位にあるものほど、個体数は減ってきます。ピラミッド型になっているのです。もっと突っ込んでみますと、最上位の生物が絶滅しないでいると、その地域の生態系は豊かになります。つまり生物種が多くなる(生物多様性)からです。白神山地のイヌワシが大切にされるのもこういった理由からなのです。 私たち人間はどうでしょうか。この地球に5億人、10億人で限界といわれています。人間は増え過ぎているのです。食糧難・貧富の差・感染症などいっぱい問題をかかえています。人間が下位にあるものを食い潰しているといえば言い過ぎでしょうか。人間は知恵者です。が時として、恐ろしい戦争など起こしたりします。これは自然淘汰の摂理なのでしょうか。これについては、また別の機会に書くことにしましょう。 フォレスティング(関宮)に参加されておられる皆様は、アウトドア派で、ナチュラリストで、しかも自然環境・地球環境の保全に、殊の外、関心が高い方ばかりだと嬉しく思っております。 第2報からは、あまりかたぐるしくないように努めながら、“森林での遊び・楽しみ方”などを中心に述べたいと思っております。 |